脳梗塞や脳出血などの脳血管障害は、一見するとどの病気・障害のカテゴリーに含めるべきか分かりにくい疾患ですが、手足の片麻痺やしびれなどの後遺症が残る場合は、「肢体の障害」として障害年金の手続きを進めることになります。リハビリの経過や判定時期における特有のルールについて解説します。
脳血管疾患によって身体が思うように動かなくなった場合、障害年金の申請が可能ですが、一般的なケガや病気による肢体の障害とは異なる「初診日の扱い」や「障害認定日(年金を請求できる日)」の特例が存在します。手続きを正しく進めるために知っておくべき3つのポイントを整理しました。
1. 脳血管障害における「障害認定日」の特例(早期申請)
通常の障害年金では、障害の程度を判定する基準日(障害認定日)は「初診日から1年6ヶ月を経過した日」と定められています。しかし、脳血管障害による肢体麻痺には重要な特例があります。
初診日から1年6ヶ月が経過する前の段階であっても、急性期から回復期にかけてリハビリなどの治療を尽くし、これ以上の回復が見込めないと医師が判断した日、すなわち「症状が固定した日(または治療効果が期待できないと判断された日)」があれば、その日を障害認定日として扱うことができます(ただし、初診日から少なくとも6ヶ月が経過している必要があります)。
これにより、1年6ヶ月の経過を待たずに、症状が固定したと認められた時点から速やかに障害年金の申請手続きへと進むことが可能になります。ただし、現在も積極的なリハビリを継続しており、医師がまだ機能回復の見込みがあると判断している期間中は、この特例は適用されず、原則通り1年6ヶ月を待ってからの判定となります。
2. 高血圧は含まれない?脳血管障害における「初診日」の正しいルール
脳梗塞や脳出血で年金を申請する際、「何年も前から高血圧で内科に通っていた場合、その高血圧の初診日が全体の初診日になってしまうのか?」という疑問を多くの方が抱かれます。
結論から言うと、障害年金のルール上、高血圧と脳血管障害(脳梗塞・脳出血)の間には原則として「相当因果関係なし」と判断されます。そのため、過去の高血圧の通院日は初診日にはならず、基本通り「脳梗塞や脳出血を発症して、最初に救急搬送などによって診察を受けた日」が初診日となります。
これは、高血圧が脳血管疾患の引き金(リスク要因)になることは医学的に事実であっても、障害年金の審査においては「高血圧があれば必ず脳梗塞になる」とは言い切れないため、別の病気として区別される仕組みになっているからです。(※同様に、糖尿病や脂質異常症などの慢性疾患での通院歴も、原則として脳血管障害の初診日とはみなされません)。
そのため、手続きの際は過去の健康診断の指摘や血圧の薬の服用開始日まで遡る必要はなく、倒れた当日に受診した病院のカルテの記録が初診日の証明書類(受診状況等証明書)のベースとなります。
3. 「肢体の診断書」に反映される日常生活の動作
肢体の障害で年金を申請する場合、医師に作成してもらう診断書(肢体の障害用)には、関節の動く範囲(可動域)や筋力だけでなく、「日常生活の動作がどれくらい一人でできるか」が非常に細かく記載されます。
- つまむ、握る、紐を結ぶ、ボタンを留めるなどの「手の動作」
- 衣服の着脱、入浴、トイレの動作などの「身のまわりの動作」
- 立ち上がる、歩く、階段の上り下りなどの「移動の動作」
これらが「一人で問題なくできる」「何かにつかまればできる」「手伝いがないとできない」といった段階で評価されます。診察室の中だけでは伝わりにくい「自宅での実際の不便さ(歩行器や杖がないと歩けない、片手しか使えず着替えに著しく時間がかかるなど)」を、日頃からリハビリの担当医や主治医にしっかりと伝えておくことが、ご自身の状態に合った正しい障害等級の判定に繋がります。